市民公開企画のご案内
2018年明治維新150年を迎え,NHKの大河ドラマでは「西郷どん」が放送されています.
この特別講演では,日本の西南端にありながら,日本の近代化や明治維新を牽引した薩摩の精神とはなんであったのかを西郷,島津の両家子孫の対談を通じて考えてみたいと思います.
医療関係者に加え,一般の方々のご参加もお待ちしております.
講演者プロフィール
西郷 隆文 氏(さいごう たかふみ)
1947年 西郷隆盛の孫の西郷隆泰の長男として奈良市に生まれ,鹿児島市で育つ
1973年 企業組合 長太郎焼窯元に入社
1978年 弟の西郷等と共に母方の出自である日置島津家の菩提寺に「日置南洲窯」を開窯
明治維新の元勲 西郷隆盛の曾孫
NPO法人西郷隆盛公奉賛会理事長
〈受賞歴〉
1984年 鹿児島市陶芸部門新人賞を受賞
その他各賞受賞
2011年 現代の名工受賞
2012年 黄綬褒章受章
島津 義秀 氏(しまづ よしひで)
薩摩琵琶弾奏家
昭和39年(1964年)大阪府泉佐野市生まれ.
母方の姓を継ぎ,大学卒業後,母の郷里鹿児島へ移住.
学生時代より,薩摩琵琶,薩摩に伝わる幻の笛「天吹(てんぷく)」及び一撃必殺剣と恐れられた「野太刀自顕流」(通称:薬丸流)を習得.
現在,鹿児島県姶良市加治木町で戦国武将・島津義弘公を祀る精矛神社宮司職の傍ら青少年育成現場「青雲舎」を平成12年に復興.
薩摩琵琶,天吹,野太刀自顕流の研鑽普及に励む.
司会・進行
田村 省三 氏(たむら しょうぞう)
常務取締役(尚古集成館担当)
1954年,鹿児島県薩摩川内市生まれ.玉川大学文学部卒業.
國學院大學文学部日本文学科・儀礼文化研究所・鹿児島県歴史資料センター黎明館を経て,1999年より2016年まで尚古集成館館長.
世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」の推薦書作成委員を務めた.
現在,鹿児島市文化財審議会会長等.
特別講演の概要
特別講演「明治維新150年と西郷どん」
明治維新150年を迎え,NHKの大河ドラマでは「西郷どん」が放送されている.この特別講演では,日本の西南端にありながら,日本の近代化や明治維新を牽引した薩摩の精神とはなんであったのかを考えてみたい.
例えば薩摩藩の蘭学は,集成館事業を推進し,近代化を図るという藩主島津斉彬の主導のもとに発展した.しかもそれは、国家的レベルのものであったと言っても過言ではない.
しかし,これらの蘭学受容のメリットが軍事や工業化に寄与したのみで,一般の民衆つまり領内の諸地域には及んでいなかったかと言えば,そうではなかった.例えば医学の分野における種痘普及も早かった.
また,鹿児島の医学が近代化の速度を早めることになるのはイギリス人医師ウイリアム・ウィリスの功績か大きい.
明治2年3月,ウィリスは政府より医学校教官兼東京府大病院医官に任じられたが,6月大学校本校とこれに付属する開成学校と兵学校,医学校兼病院の設置が決まり,
7月にかねてドイツ医学採用を強く主張してきた相良知安が大学少丞に任じられる等,イギリス医学の排斥が決定的となり,この頃ウィリスの処遇が問題となった.
結果的に,成辰戦争以来のウィリスとの特別な交友に配慮して,西郷・大久保の斡旋により,薩摩藩がウィリスを引き受けることとなった.
ウィリスはその後明治10年までの8年を鹿児島での医学教育と病院の運営に従事することとなる.
医学校・病院ははじめ城下浄光明寺に設けられたが,明治3年城下滑川に移され,病院はレンガ造りの建物であったことから赤倉病院と呼ばれた.
ウィリスの滞鹿中,病院への外来・入院患者は1万5千余名にのぼり,往診患者数数千,医学生徒総数は300名を数えたと言う.
またいずれもイギリス医学を採用した海軍の軍医総監となり著名な医師となった高木兼寛・実吉安純・加賀美光賢・河村豊州・三田村国忠らをはじめ,
その後地域の医療に貢献することとなった多くの医師たちかウィリスのもとから誕生した.
幕末から明治という困難な時代を当時の青年達はよく凌いだ.明治維新は,日本が初めて経験する国家存亡の危機であり,彼らは身命を賭して行動し,極めて短時日のうちに近代国家の基礎をつくった.
その危機を救い,日本の独立を守った明治維新の意味や背景となった薩摩の精神文化,西郷隆盛の思想にも触れながら,将来世代になにを継承していくべきかを明らかにしたい.
主催:第73回日本消化器外科学会総会
会長:夏越 祥次(鹿児島大学大学院 消化器・乳腺甲状腺外科学 教授)